情報革命によって生まれたエスカレーター

僕はギターを弾くのが趣味なので、ときどきギターの上手な人の動画を見るのですが、その中でギタリストのCharさんが非常に興味深いことを言ってました。

それが、

「自分たち(Charさんたち)は恵まれていた」
「なぜなら間違えることができるから」
「いまの人たちは情報があるせいで間違えることができない」

…という話です。

たぶん、Charさんが言いたいのは、「インターネットのおかげで早く上達できるようになったけど、間違える練習を省いてしまったせいで、そこを超える本物のギタリストが生まれにくくなってしまった」ということなんだと思います。

で、以下では「なぜそんな現象が起きるのか」を僕なりに解説してみます。

この情報革命の時代に起きたことは、僕なりの表現をすれば「上達のためのエスカレーターができたこと」だと思います。

例えば、”1”が素人で”10”がプロだとしましょう。

情報革命が起きる前までは、1から10にかけてピラミッド状の分布になっていたわけです。

でも、インターネット上に大量の情報がアップロードされることによって、それまでレベルの高い人しか知らないことに誰でもアクセス可能になりました。

なので、その情報にアクセスすることで、8~9くらいのレベルであれば、「誰でも」とは言わないまでも、真面目に頑張る人なら簡単に到達できるようになりました。

つまり、上達のためのエスカレーターができたわけです。

じゃあ、これは「いいことづくめじゃん!」「ネット万歳!!」みたいに締めくくってもいいかというと、決してそうでもなくて、ちゃんと悪い面もあります。

それは一言でいえば「間違えることができなくなった」ということです。

「間違える」というのは決してムダなことじゃありません。

それはむしろ、成功することより大切な経験になります。

というのも、たくさんの失敗を積むことでしか、直感・センスは磨かれないからです。

例えば数学だったら、問題の解き方を覚えて試験に臨む人って、基礎問題なら解けますが、応用問題になったら途端に歯が立たなくなります。

でも、たとえ答えを与えられたとしても、そこで満足せずに自分なりに別解を探ったり、あるいは自分で問題を作るといったことをしていた人は、時間はかかるけど応用力が着実に身につきます。

そういう効率の悪い努力を大量に積んできた人は、どんな問題でも見た瞬間に、解き方がなんとなくわかってしまうんですね。

で、話を戻すと情報革命以前は、1から10まで自力で登っていかなくちゃいけなかったので、その分、8~9までにたどり着く過程で、崖を登ってく技術や体力が身につきました。

でも、情報革命後は、みんなエスカレーターを使って登ることしか考えなくなったので、8~9あたりまでたどり着いた後、次の10レベルにどうやって登ったらいいのかわからず、立ち往生してしまうわけです。

そんなわけで冒頭の「いまの人たちは恵まれていない」という結論に至るんだと思います。

だから、本当に大切なことは、効率の悪い努力を大量にこなしてくことでしか得られない…ということなんでしょうね。

僕も、小さいことを積み上げなくちゃいけない局面で、ついつい「これは効率が悪いから…」「まともに頑張るなんて馬鹿げてる」と逃げる言い訳をしたくなってしまいますが、この言葉を胸に正面から立ち向かっていけたらな、と思います。

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