【感想】「二十一世紀に生きる君たちへ」司馬遼太郎

  • 2020年6月20日
  • 2020年6月21日
  • 書籍

僕は司馬遼太郎の小説が結構好きで、例えば、有名な「竜馬がゆく」とかは中学生の頃から読んでいました。

自分は愛国心とかがあるほうでもないのですが、司馬遼太郎の本を読むと「むかしの日本人はすごかったんだなあ」と感心してしまうんですよね。

そんな僕が、この前、Amazonで本を漁っていたときに見つたのが、こちらの「二十一世紀に生きる君たちへ」という本です。

二十一世紀に生きる君たちへ (併載:洪庵のたいまつ),
司馬 遼太郎 (しば りょうたろう) (著)

正直、なぜこの本を買ったかというのは思い出せなくて、たぶん「司馬遼太郎の本だから少し読んでみようか」くらいの動機だったと思います。

で、注文したときは小さい文庫本みたいなのが来るのだと思っていたのですが、ハードカバーで大きめの本が届いてビックリしました。

どちらかといえば、写真入りの詩集みたいなかんじだと思ったほうがいいかもしれません。

本全体の構成としては、前半部分が本題の「二十一世紀に生きる君たちへ」で、後半部分には「洪庵のたいまつ」という話が載ってあります。

 

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本の内容について簡単な要約

 

この本は元々が小学校の教科書に載っていた作品だったこともあってか、「人は何のために生きているのか?」「どのように生きるべきなのか?」といった内容を、司馬遼太郎らしく歴史的な視点から、子どもたちに伝える形で書かれています。

そして、本書後半の「洪庵のたいまつ」の部分では、前半で述べた「世のために尽くして生きた人」の具体例である江戸末期の医者・緒方洪庵の生涯が解説されています。

 

心に残ったところ

 

人間は、―繰り返すようだが―自然によって生かされてきた。古代でも中世でも自然こそ神々であるとした。このことは、少しも誤っていないのである。歴史の中の人々は、自然をおそれ、その力をあがめ、自分たちの上にあるものとして身をつつしんできた。

二十一世紀に生きる君たちへ

聞いたところによると、司馬遼太郎は自然が好きだったらしく、自宅にも雑木林をイメージした庭があって、書斎からその様子を眺めたり、あるいは毎日散歩したりといったことをしていたそうです。

僕も部屋に観葉植物を飾って世話をするのが趣味なので、そこは親近感がわきました。

なんというか、植物って本当に癒やされるんですよね。

で、この癒やしの力というのは、日頃から作品作りに励む必要のある小説家にはもってこいのものだと思うし、そういうこともあって雑木林的な庭を作ったりしたんじゃないでしょうか。

まあ、完全に僕の勝手な予想でしかありませんが、本書のこの部分は、司馬遼太郎の自然に対する信仰みたいなものが感じられます。

 

鎌倉時代の武士たちは、「たのもしさ」ということを、たいせつにしてきた。人間は、いつの時代でもたのもしい人格を持たねばならない。人間というのは、男女とも、たのもしくない人格にみりょくを感じないのである。

二十一世紀に生きる君たちへ

自分を含めて「頼れる人」って、なかなかいないですよね。

そのために、「他人の痛みを感じること」が大切だと本書では語られていて、一部「たったそれだけ?」みたいに思ってしまう自分もいるのですが、そのちょっとしたことが、実は意外と難しいことなのかもしれません。

 

洪庵は、自分自身と弟子たちへのいましめとして、十二ヶ条よりなる訓戒を書いた。その第一条の意味は、次のようで、まことにきびしい。

医者がこの世で生活しているのは、人のためであって自分のためではない。決して有名になろうと思うな。また利益をおおうとするな。ただただ自分を捨てよ。そして人を救うことだけを考えよ。

洪庵のたいまつ

こちらは、「洪庵のたいまつ」からの引用になります。

いまの僕らからすると、「ただただ自分を捨てよ」というのは、「あとで良いことが待っているから我慢しなさい」というビジネスマン的な思考か、あるいは「ひたすら自分を犠牲にすることが美しい」みたいなキリスト教的な意味でしか読み取れない人が多いでしょうが、

きっと洪庵からすれば、他人の役に立つということ自体が、自らの持つ力の大きさの証明であり、幸福の源泉だったんだろうなって思います。

 

全体を読んでみての感想

 

そもそもは前半の「二十一世紀に生きる君たちへ」を読むのが目的だったのですが、後半の「洪庵のたいまつ」のほうが個人的には楽しめました。

それまで僕は緒方洪庵という人をあまり知らなくて、この本が、洪庵について調べるきっかけになったのですが、そこに興味を持てただけでも買ってよかったと思います。

洪庵は最終的に奥医師という医者として最高の名誉を手に入れたのですが、その翌年にあっけなく死んでしまうわけで、「それとこれとは関係ない」と言われたらそれまでなのですが、やっぱり名誉は人を幸せにしてくれるわけじゃないのでしょうね。

本書の最後にも書いてあるとおり、洪庵にとってイチバン楽しかったのは、塾生を指導して、自分の能力を生産的に発揮しているときだったんだろうと思います。

人間にとって幸せってなんだろうか?と深く考えさせてくれる良い話でした。

 

こんな人におすすめ

 

この本ですが、司馬遼太郎が好きな人、歴史が好きな人は楽しめると思います。

また、小学校の教科書に掲載されていたということもあり、内容が簡潔にまとまっているので、分厚い本を読むのに抵抗がある人もぜひ読んでみてほしいです。

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