「星の王子さま」といえば、みんなが知っている名著ということもあり特に説明は不要でしょう。
時間をおいて読むたびに新しい発見があって、本当にいい本だと思うわけですが、最近、僕が感動したのはこちらのキツネが出てくるシーンです↓
「君は、飼いならしたものしか知ることができないんだよ。人間たちには、もう何かを知るための時間がない。だから、お店に行って、出来合いのものを買うだけさ。だけど、友だちはどこにも売っていないから、人間たちは友だちを持っていないんだ。友だちが欲しいのなら、ぼくを飼いならすことだよ」
サン=テグジュペリ. 星の王子さま (Kindle の位置No.880-883). ゴマブックス株式会社. Kindle 版.
この言葉は、心に刺さりますね。。
もし「飼いならす」という言葉が分かりづらいのであれば、「そのために努力する」とか「時間を共有する」みたいに置き換えるといいかなって思います。
例えば、僕らは退屈したとき、お金を使ってモノやサービスを消費するわけですが、そうやって退屈が紛らわされたとしても、ほんの一瞬なんですよね。
だから、なにかを本当に楽しもうと思ったら、そのために一生懸命努力しなければいけません。
そうやって努力して時間を費やすことで、初めて「知る」ことが可能になり、それを「楽しむ」能力が身につくのです。
これは人間関係についても同じでしょう。
友だちでも恋人でもいいのですが、僕らはついつい「自分にふさわしい相手を探そう」とか「いい相手さえ見つかれば…」なんて考えがちです。
でも、それってなにか良い商品を探すときの発想であって、たしかに買い物では上手くいくかもしれませんが、人間関係だと絶対上手くいかないんですよね^^;
なので、本当に良い相手というのは、お互いに時間を共有して関係を育てていくことでしか手に入らないのです。
そんなわけで、このキツネは、時間や労力を費やすことでしか手に入らないものを、お金によって交換できると思い込んでいる人間の愚かしさを批判しているんでしょうね。
資本主義社会が成立する前の時代は、きっとそれが当たり前だったのだと思います。
でも、資本主義社会が成立して、あらゆることに市場原理が適用されていった結果、みんないつの間にか、その当たり前のことを忘れてしまったのでしょうね。
ちなみに、この交換の話について、マルクスは以下のように説明してくれています。
人間を人間とみなし、世界にたいする人間の関係を人間的な関係とみなせば、愛は愛とだけ、信頼は信頼とだけしか交換できない。その他も同様である。
芸術を楽しみたければ、芸術の修行を積んだ人間でなければならない。人びとに影響をおよぼしたいと思うなら、実際に他の人びとをほんとうに刺激し、影響をあたえられるような人物でなければならない。
人間や自然にたいする君の関わり方はすべて、自分の意志の対象にふさわしいような、君の現実の、個人としての生の明確な表出でなければならない。
もし人を愛してもその人の心に愛が生まれなかったとしたら、つまり、自分の愛が愛を生まないようなものだったら、また、愛する者としての生の表出によっても、愛される人間になれなかったとしたら、その愛は無力であり不幸である
エーリッヒ・フロム. 愛するということ 新訳版 (Kindle の位置No.425-434). 紀伊國屋書店. Kindle 版.
ちなみに、その後の王子さまの「どうすればいいの?」という質問に対するキツネの答えもすごく面白いんですよね。
まず、キツネは「なによりも辛抱強くならなくちゃいけない」と答え、そして、王子さまとの待ち合わせについては「同じ時間に来なくちゃ」と言います。
これって僕の解釈になるのですが、「なにかを好きになろうと思ったら、規律と忍耐が必要になる」って言いたいんじゃないかなって感じました。
というわけで、いろんな教訓が学べる良い本なので、まだの人はぜひ一度読んでみてほしいなって思います。